『日本幻想文学事典』をめぐる騒動について

 昨年十二月に筑摩書房よりちくま文庫として刊行された東雅夫著『日本幻想文学事典』についてお話しします。
 この著作は、東単独の著作として刊行され、ブログ等でも「石堂藍執筆部分を排して単著とした」と言明されておりましたが、作家事典部分には石堂藍執筆分が含まれております。私が調べたところでは、およそ一割近くが石堂執筆分でした。部分的に変更されている場合もあります。
 私は本書刊行後、『日本幻想作家事典』をもとにした著作が世に出回っていることを人に知らされ、書店で手にとって初めてこのような事実を知りました。
 私は、これを著作権の侵害と認め、筑摩書房及び東雅夫に抗議致しました。
 筑摩書房は、手続き上の不備(原著『日本幻想作家事典』が執筆区分のない共著であるにもかかわらず、共著者の了承を得ることなしに、二次的著作を刊行したこと)を認め、当方が求めた謝罪公告、慰謝料の支払いに応じました。
 東雅夫は一貫して、石堂の執筆分を故意に用いたのではなく、たまたま混入した部分があるだけのことと主張しておりますが、当方の出した諸々の条件をある程度呑み、慰謝料の支払いに応じております。
 詳細はホームページに記載しております。
http://isidora.sakura.ne.jp/isi/ran68.html
http://isidora.sakura.ne.jp/isi/ran69.html

 法的な手続きを踏んで、ことを処理したのには理由があります。 私が何年もかけて準備し、精魂を傾けて作った『日本幻想作家事典』に関する問題であるだけに、ただ泣き寝入りするということができなかったということ。東のこの著作を認めてしまうと、私が執筆したものが、東が執筆したものだということになってしまうということ。これは剽窃とは異なる事態であり、私には到底容認できるものではなかったといこと。
 そしてまた、このようなことを、二十年にわたって『幻想文学』を共に作ってきた東がしたということに、私はたいへん大きな衝撃を受け、他者の介在なしには、到底冷静に対処できなかったということ。
 
 そしてこの事件に対する東の対応は、私が東に持っていた好意、あるいは友情のすべてを根こそぎにするに充分なものでした。
 私はまだ、この事件にとらわれており、いろいろと考え出すと、はらわたが煮えくりかえりそうな気持ちになります。
 とはいえ、こうした過去のことは忘れ去り、前へと進まねばなりません。

 私は東雅夫との交わりはいっさい断ちたいと考えております。
 東と出会いそうな集まり等、あるいは東に関わる企画等への参画はすべてご遠慮させていただくことになるでしょう。そんなものがあるとすれば、ですが。

 また、再発防止という観点から、私との共著物の二次利用をしない、また『幻想文学』について私の了承を得ることなしに執筆・発言しない、という和解事項を東雅夫は了承しております。
 そのため『幻想文学』について、過去のことを記録しておくのは、私一人の務めとなりました。
 このブログで細々と書いていこうと考えています。

 『幻想文学』終刊以来、十一年となります。
 この間、良い友人に恵まれ、さまざまなユニークな仕事に携わることができました。
 今後も、過去にとらわれず、私にしかできない執筆活動を展開して参る所存です。
 ご支援いただければ幸いです。