幻想文学講義録

幻想文学』のインタビューをまとめた大部の本が国書刊行会から出る。A5版二段組みで七〇〇ページを超える。まだたくさんの割愛されたインタビューがあるものの、それなりにまとめられたと言えるだろう。
 だいたい二〇号までが数が多く、後半に行くに従って減ってゆく。
幻想文学』はだいたい四〇号までに時代に先駆ける貴重な文学的仕事をしていて、後半になるほど、幻想の文化という視座で特集を組むことが多くなった。幻想という切り口で世界をすべて眺めてみようといところだろうか。

いつのものだかよくわらない(たぶん35−40号くらいの頃)、「新春恒例★幻想文学/特集企画」というペーパーがある。東雅夫が作ったものだがちょっと写してみる、

【シリーズ/幻想文学教養講座】
幻想映画館
幻想音楽館
幻想演劇館
幻想写真館
幻想漫画館
幻想建築館
幻想神話館
幻想民話館
幻想伝説館
幻想食物館
幻想科学館
幻想宗教館

神秘学幻想
博物学幻想
心理学幻想
民俗学幻想
社会学幻想

 幻想とほかのメディア、学問領域、ジャンルなどをくっつけただけ。だけではあるけれど、それで実際に特集を組んだものもあるし、事典で果たせた部分もある。
 民俗学は、雑誌立ち上げ時からの懸案で、いつか……と思いつつも、果たせなかった。東は、実話怪談に関わることで、いくらかそれを成し遂げただろう。

【シリーズ幻想のトポス】
東京幻想
金沢幻想
南仏幻想
ニューイングランド幻想
プラハ
EAST ASIA
 
 東京、プラハだけは、辛うじて都市幻想で拾えたか。

【テーマ特集】
世界の終末
死後の世界
疫病文学館
化物屋敷大全
妖怪文学館
世界夢文学誌
百物語大全
魔人物語

 ★化物屋敷も妖怪も、いつでもやってよかった。ついでに言えば陰陽師も。しかし東は外で怪奇系の仕事をするようになると、そういう売れそうなものを『幻想文学』でやるのに及び腰となった。反論するだろうな。でもこれは、私にしかわからない、本当のこと。『幻想文学』でやるにはもっと勉強しないと……というのが口実だった。何の説得力もない。

幻想文学マニュアル】
中国幻想文学必携
アメリ幻想文学必携
ラテンアメリカ幻想文学必携
南欧幻想文学必携

 メモでは南欧に×がついている(笑)。完全無欠に売れない感じ(笑) 

【新・幻想文学最前線】
幻想純文学の現在
モダンホラー・ジャパネスク
幻想ミステリ最前線
幻想SF最前線
伝奇バイオレンス盛衰記
ヤングアダルト幻想
幻想リアリズム文学誌
幻想文学批評の現在(文芸評論家たちの幻想度チェック!)

 最後の「批評の現在」は、東は一押し丸印をつけているが、私は大きく×印にしている(笑)。
 
 今、やりたいと思う、というより、無理してもやっておいて形にしておきたかった、と思うのは、幻想科学館だろうか。これはとても難しい。若いときでなくては出来なかったのではないかと思う。