『映画の生体解剖』

 高橋洋稲生平太郎対談集『映画の生体解剖』(洋泉社)編集しました。ただいま発売中です。

映画の生体解剖~恐怖と恍惚のシネマガイド~

映画の生体解剖~恐怖と恍惚のシネマガイド~

『映画の生体解剖』索引データをアップ。 http://isidora.sakura.ne.jp/ino/vivisection.html エクセル。原題一覧つき。また、紙幅の都合でできなかった注の中の作品やスペックの人名、マンガや小説作品なども網羅。本の索引とは違う方式です。
 私が一から作っていて、本にある索引との突き合わせなどはしていないため、脱落などもあるでしょうが、ご了承ください。原題一覧(一部に小説作品が混入しているがご寛恕)も付けたので、このデータは結構便利だと思います。『生体解剖』お持ちの方は、是非ダウンロードしてください。


〜『生体解剖』こぼれ話〜
 私の仕事は、出口が見えなくなってしまった対談を本の形に仕上げるというものでした。つまり、途中から参加です。
 横山さんが、なかなか進展しないとおっしゃるので、参加させろとしつこく要請し、その希望がかなって、編集に加わることができました。
 これまでの対談の起こしをチェックして、再構成。「読み物」としての体裁を整えて、たたき台を作り、さらに全体の構成を提案して、不足分について追加の対談を行うことを提言。たたき台を読んでもらった感想を聞いて作った最初の本格的な構成案がこれ。

a. プロローグ……映像体験
b. 映画の欲望を知れ!
i. 手術台
ii. 放電・光
iii. 沼・水
iv. 悪あるいは恐怖の源
c. 見るべきところはここだ!
i. 恍惚と恐怖
ii. 超自然の感覚
iii. 通俗と神話
iv. パラノイア
d. 映画の歴史を書き換えろ!
i. 手法
ii. 時間
iii. 詐欺
iv. 分身

 dの部分は対談としては存在せず、メールのやりとりや、内容の中から浮かび上がってきたもの。「時間」については洋泉社の田野辺さんから必ず入れるように、と言われたもの。
 d-1 が「映画がリアルを支配する」へ、「詐欺」というのは霊媒関連の話のことで、むしろ異界につながる話に展開し、「分身」は「姉妹」ですね。
 分身妄想というのは、高橋さんが非常に強くとらわれているモチーフのようで、「恐怖」を感じるという映画はそのモチーフ。高橋さんのこだわりを通してこれを敷衍してみると、「いるはずのないものがいる」ということになるように思われます。「自分の分身を見ると近いうちに死ぬ」という俗信がありますが、そういうものとも通じるような。
 どの章から読んでもいいような感じに、つまり拾い読みが可能なように構成した。とはいえ、「前にも言及した〜〜は……」みたいな言葉が出ないわけにはいかなかったけれども。
 このたたき台に、高橋さんが訂正を加えて、現行の形に。高橋さんはたいへんに聡明な方で、さまざまなことを適確に掴みます。さらに、謙虚。まったく威張らない人で、しかも自分の嗜好や影響を受けたものなどをものすごく素直に出して平気な人。要するに見栄を張らない。たいへんに仕事がしやすかったです。
 高橋さんは、まったくの同世代というか、同期の人。高校大学で同級生だった人たちとは、会えば同級生の間柄なのだけど、そうでなかった同年齢の人とは、そうはいかない。けれども、高橋さんはそのように飾らない人なので、気分は同級生、という感じ。実際、大学で知り合っていてもおかしくなかった。幻想文学会でもホラー映画はよく観てたし、映画マニアの人もいて、菊地秀行さんともそちらでつながっていたのだから。作る人と観て評論する人とは違うかも知れないけど……。

 ところで、本を作りながら、高橋さんは何かというとクローネンバーグに言及するので、クローネンバーグが好きなんだな、と思っていたのだけれど、5/2に行われたイベントで、別に好きじゃないんだけど云々と言っていて、びっくり。別に好きじゃなかったのか! でも気になるわけね(笑)。