一億総懺悔

 保阪正康『敗戦前後の日本人』を読んで、またも鬱勃たる怒りを感じる。
 この中で、東久邇が述べた、一億層懺悔の話が出てくる。私は、戦争責任問題の関わる言葉だと思っていたが、ここでは敗戦責任問題として語られている。つまり……負けたのは、国民全員がそれぞれに努力が足りなかった、という話なのだ。敗戦の御前会議で泣いたというのも同じで、負けたのを申し訳ないと泣いている。終戦時に自殺した人もそうだ。
 冷静に考えて、一年で勝敗は決している。戦争がずるずる終わらないのは、特に最終局面でも終わらないのは、勝ち目もないのに戦い続ける日本人を見てアメリカがひるむだろう、と発想したからなのである。死屍累々となれば多少は有利な終戦ができる、という発想なのだ。
 この本を読めば、否応なくさまざまなことを考えざるを得ない。多くの人に読んでもらいたい一冊である。

新版 敗戦前後の日本人 (朝日文庫 ほ 4-9)

新版 敗戦前後の日本人 (朝日文庫 ほ 4-9)

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