読了書
児童文学『冬の龍』は、作品としては普通だが、元気なおばあさんが切り盛りする早稲田の古い下宿を舞台に、零細な出版業者、セドリや古書店、木工の修行をする父親、建築家の卵、司書なども登場するというもので、あまりにも自分に近いネタばかりのために、逆に共感がわかない。
長野まゆみの最近の作品には、一種の余裕が感じられるが、同時に、前衛への切迫感みたいなものが減ってしまったようにも思う。一年ほど前に、本の雑誌でも傑作と褒めたものがあったが、成熟するのもいいけど、触れたら痛いようなものも書いてもらいたいなどと思うのは、呑気な読者の身勝手。津原泰水が『ブラバン』みたいなものしか書かなくなったら、読もうとは思わないというのと同じ……とも言えないが。『メルカトル』という作品そのものは良かった。
『でかい月だな』は長男が児童文学だというので、読んでみたら、確かにそうだった。小すばは児童文学作家に賞をあげるようになっていたんだな。知らなかった。最後の方の展開はいかがなものかと思うが、児童文学として読むと、全体に感じがよい。
『僕僕先生』は問題外につまらない。そもそも、新潮社の編集は、文章の面倒も見てやらないのか。
『水銀虫』は素人の投稿作か?と疑った。「虎落の日」とかどう読んだらいいのかと思ってしまう。
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