抒情的恐怖群

 高原英理の怪奇幻想短篇集。「夜の夢こそまこと」というタイプの作品が二つあり、また、現実溶解型の、彼の美質が最もよく表れている作品が多い。「グレー・グレー」という唯一既発表のゾンビの純愛話も非常に良かった。都市幻想というタームが大好きな某が喜びそうな作品も多い。
 文章が奇妙と感じる人もいるかも知れないが、高原が築き上げたこの文体は、恐怖と抒情を二つながらに満たすものとしては、なかなかいけている。鏡花のような、〈すごい文体〉を、意識しないでいられる幸福な、言い換えれば愚かで無知な作家が味わうことのない苦労を味わい、紡ぎ上げてきた文体だろう。
 怪奇、というよりはやはり幻想、の好きな人に薦めたい。