礒崎さんと井上輝夫先生

国書刊行会の元編集長の礒崎さんは、慶應義塾大学仏文科の出身だが、井上先生が経済学部だったこともあって、井上先生とは在学時代には縁がなかった。けれども、礒崎さんの最初の本格的な編集になる《フランス世紀末文学叢書》の『詞華集』で井上先生とのお付き合いが始まった。その後、《バベルの図書館》でもガラン版の千夜一夜の翻訳をお願いしたりして、若干のお付き合いがあった。
やはり礒崎さんも井上先生とは長く連絡が途絶えていたのだが、《バベルの図書館》再編の件があって、お付き合いが復活した。わたくしが、礒崎さんに井上先生の連絡先をお教えしたこともあった。
東京でお二人で歓談なさって、大いに盛り上がったとのこと。
井上先生は西脇順三郎を詩の師と仰いだのだけれど、礒崎さんはその西脇に今、はまっているよし。西脇のことももっと話したかったと、礒崎さんはおっしゃる。

わたくしの周囲にも波紋を投げかけて井上先生は逝かれた。
金を残すのは三流、名を残すのは二流、人を残すのは一流、という言葉があるが、井上先生は一流の人であった。
今はすべての束縛から解かれて、自由に安らいでおられるだろう。