柴田南雄とその時代

柴田南雄とその時代 第一期(DVD付)

柴田南雄とその時代 第一期(DVD付)

礒崎さんにいただいた。
私は、この中に演奏がある「宇宙について」の初演に参加している。DVDでは再演で、演出がやはり少し違うようだ。指揮は同じ田中信昭先生。
学生か、完全なプロでなければ実現が難しいような曲。柴田先生はそんな合唱のシアターピースをいくつも作っておられる。
このDVDに「その時代」とあるように、時代の産物でもあるのではないか。
「宇宙について」以後の、「人間と死」「歌垣」「自然について」といった、「我々はどこから来てどこへ行くのか」的なテーマの曲を聴いていると、「今」の産物ではない、という感を強くする。
柴田先生の曲には、本当に力を感じる。それは、合唱が、こぎれいに歌をまとめればそれでよいというものではないということを、改めて教えてくれる。例えば「宇宙について」の「しばたやま」を聴くと、感動がわき上がる。「しばたやま」は山田のおらっしょをもとに作られたユニゾンだ。むしろきれいに歌うべきものでない。
「宇宙について」には、柴田純子夫人のエッセーが付いていて、感慨深かった。
そして、歌は「詩」を破壊するが、同時に、あらゆる文学を「詩」に昇華できることも教えてくれる。ジョルダノ・ブルーノを歌詞にしてしまう「自然について」はその典型である。
ああ、こういう作品を歌いたい。