もうひとつの街その他

もうひとつの街

もうひとつの街

宵星の魔女エミリー (新大陸魔法冒険記)

宵星の魔女エミリー (新大陸魔法冒険記)

ディアスと月の誓約

ディアスと月の誓約

怒りのフローラ 上 (一万一千の部屋を持つ屋敷と魔法の執事)

怒りのフローラ 上 (一万一千の部屋を持つ屋敷と魔法の執事)

自堕落な時間を過ごし、しょうもない本を読み、太り続ける毎日である。

闇の中にもう一つの世界がある。「もうひとつの街」は題材的にはとても好きなものなので期待して読んだが、がっかり。意味不明言語世界(自動書記的)が出てくるのはかまわないが、現実の描写も意味不明瞭でははなはだ困る。翻訳なのでもう多くは望めないのは分かってはいるが、この手の小説で優れたものなら、翻訳でも伝わるものはあるはずだ。よかったのは、わりと最初の方で、円柱をのぞき込むところ。ただ、もっと衝撃的な感じになった部分ではないかと惜しまれる。あるいは作者はまったく無意識か。それからじゅうたんが海に変わるところや異世界から酒場のトイレにいきなり戻るところ。『リリス』的。訳者は「哲学的」と言っているが、そういう講釈の部分はまったく蛇足的な詰まらぬ部分と感じた。まあ、たいがい、「哲学的」などと簡単に言われてしまうものはそうなのだが。

「宵星の魔女エミリー」は軽エンタメ。設定や内容はそこそこ面白いのだが、主人公二人の描写がいまいち。特に男の方が魅力に欠ける。設定されている人物像は申し分ないのだが、セリフや行動や,ヒロインの目を通してみての彼が充分に描かれていない。描くべきはそこなのに。

「月の誓約」の乾石は東京創元社よりデビュー。今度はハヤカワからも単行本を出してもらえたようだ。これはもう完全にジュヴナイルになっており、やはりこの方が資質に合っているように思われる。ラストの始末を除けば悪くない。
 それにしても、みんなジュヴナイルで、底力を発揮するのがなんとも。本当に大人の小説を書けるファンタジストはいないのだろうか。

「怒りのフローラ」はシリーズの完結編。フローラは成長して外で冒険を繰り広げ、屋敷も執事もどこかへ行ってしまった。もともと無理の多い設定だった。