国書刊行会の幻想文学出版史

昨日、夜想のアトリエ・パラボリカに行き、礒崎・東対談を聴いてきた。
もともと、礒崎編集長への出演依頼があって、人前に出るのがお嫌いな礒崎さんは、東とならということで出演を承諾したとのこと。それで、対談ではなく、インタビュアー東によるインタビューという実質であった。東は、座談的なものは得意なので、うまく話を進め、全体にわかりやすく、聞かせるものになっていたと思う。
小さい会場で、知人も多かったが、若い人も結構多くて、盛況だった。びっくり!
内容的には、私には目新しい話はほぼなかったけれども、みんな若かったのね、としみじみ思う。
それから、私自身が一つ、質問をさせてもらった。今年国書刊行会の四十周年記念で(本当は去年だったけど、震災の影響で今年にずらした)、「国書刊行会本のベスト3」という企画が行われる。諸人にアンケートして、それを小冊子にまとめると。私のところにも依頼が来ていて、あまりにも悩ましい。だから、礒崎さんにも同じ質問をぶつけてみたのだ。
回答は、《バベル》(叢書もいいの?)、『山尾悠子作品集成』『書物の宇宙誌 : 澁澤龍彦蔵書目録』。
会の後、出演料で礒崎さんにおごっていただいて、食事をした。そこで、いくつか会場では漏れた話題が出た。
一つは装釘の話。《幻想文学大系》の装釘には賛否両論ある。字組も印刷の色刷りも、とにかく読みにくいことで有名なシリーズだからだ。だが、幻想文学というものの一つの雰囲気を、あの装釘が醸成していることも間違いがない。私自身は、《幻想文学大系》にとても強い影響を受けたクチなので、この装釘あってこその大系だと感じる(この装丁が実は大好きである)。東・礒崎は、やはり本文主義というか、装釘が主張しすぎるのはよくない、という立場。その案配は、なかなか難しいものがある、というような話。で、礒崎さんが、現在最も信頼している装釘家が、柳川貴代さん。先のベスト3でも、バベルのはそれは海外のをそのまま持ってきたものだが、あとの二つの装丁は柳川さん。山尾本はみんなそうだし、最近の全集もそう。彼女の装丁はすばらしい。最近、『ラピスラズリ』が文庫化されたけれど、国書刊行会のもと本は、あまりにも美しい本なので、再読できない、という話もある。友人の有里さんは文庫で初めて再読し、昨日同席した門賀さんというフリーランスのライターの方は読書用にもう一冊購入したとのこと。なんだかんだ言っても、装丁は本の存在感そのものを高めるので、重要であることには変わりがない。というわけで、装丁の話で盛り上がった。
あとは鬼籍に入られた方の話題など。私たち三人は、50歳を越えた。馬齢を重ねるとはよく云ったもので、一向に先達の到達点に追いついていないような気がする。もっとまともになれる日が来るのか? で、私が「人間はいくつになっても変われる」と言ったところ、「隗より始めよ」「お前に言われるか?」と並列的に声が上がった。え〜なんで〜?(憮然)
こんな具合にだべりながら、たくさん食べ、今朝も体重は増えていた……。