剣姫

ハヤカワFT文庫の新刊。ヤングアダルト向けの痛快ロマンス。アマゾンでいかなる手違いか、アダルト指定になってしまい、楽天ブックスのみの掲示になる。
何の変哲もない中世的別世界が舞台。しかも「七王国」となっていて、なんかのパクリかい、と突っ込みたいところだが、テイストは真逆。明るく、ストレスがない。
この世界唯一の魔法は、ギフトの存在。遺伝子とは関係なく、オッドアイの子には特殊能力がもれなくついてくる。王制なので、権力者はオッドアイの子を集めては、役に立てば使い、役に立たなければ放置、という政策を採っている。非常に危険な能力の場合は殺されたり幽閉されたりしそうだが、そういうことはあまり考えられていなくて、かなりのんきである。
ヒロインは、何のギフトかよくわからないまま成長するが、からかって手を出してきた従兄を速攻でぶち殺してしまったことから、殺しのギフトを持つ者と認定されてしまう。王の姪であったため、充分な訓練を受けることとなり、王の拷問官・暗殺者として少女時代を送ることに。けれども、それがいやでたまらない彼女は、密かに不正をただす地下組織を立ち上げ、人々を助け始める。そして、何の理由もなく拉致された老人(ある国の王の叔父)を助けるために、他国に忍び込む。そこで彼女を待っていたのは運命の出会いだった……。
もちろん、小説中では最初の出会いは戦いなのだが、まあ、こう進むよね、という方向へみごとに進み、予定調和に充ち満ちているというか。そういう小説。とにかく読後感の爽快なことは、最近のFT文庫の中では群を抜いている。なにしろヒロインはめちゃくちゃ強い。リナ・インバース並である。そしてそのお相手もヒロインを補完する形で無敵である。最強カップル。けれどもそんな2人でも勝つのが難しい強敵の設定が巧み。ストレス解消にぴったりの一冊である。