トイ・ストーリー3

CGの約30年の歩みを考えるとくらくらする。それはハードウェア発展の歴史なわけだけど、それがどれくらい、物事を変えてしまったかを思うと、それにもまたくらくらとさせられる。けれども、物語の根幹は、それほどには変わらない。変わらないもの、変わるもの、新しいもの、新しくないもの、私の興味も関心も、どうしてもそのような根源的なところへ向かっていくように思われる。
さて、トイ・ストーリーは、1995年(日本公開は96年)に長編フルCGの第一作として華々しく登場した。あくまでも子ども向けの春休み公開作品であり、日本語吹き替え版がほとんどであった。子供たちと一緒に上野まで観に行き、うちではしばらくの間、所ジョージの演じるバズのせりふが流行語になった(かっこつけて墜ちてるだけだ)。
現実には15年、そして物語中では8-10年の年月が流れ、アンディは大学入学に伴って、家を出ることになる。おもちゃたちは、ウッディは大学行きの箱に入れられるが、ほかのおもちゃたちは捨てられたと勘違いして、新天地を求めて保育園に移るのだが……。
古くなったおもちゃの運命を描き、三作を通しておもちゃの生涯を描くというテーマに挑んでいるわけだが、ハリウッド=ディズニーであるから、あまやかな結末は用意されている。感動はその結末にあるのではなく、おもちゃたちの友情を美しく描ききったクライマックスシーンにあることはまちがいない。
ラストも素晴らしいのだけれど、それは、私が母親だからで、アンディの成長と自立への第一歩に胸が迫るのだ。私も、子どもたちと一緒にアニメを観に行くなどということはもはやない。
このアニメは、子供が観てもそれなりに楽しいだろうが、テーマそのものが子ども向けだった1と比べると、どうしても大人寄りの物語になっていて、子供にはこの情感が十全には理解できないだろう。ただし、おもちゃを会社に忠誠を尽くすサラリーマンの隠喩などと観ては行けない。それは、アンディを観ていない見方である。
吹き替えは、3でも変わらぬ俳優によって演じられ(亡くなってしまった名古屋章=Mr.ポテトヘッドと、その夫人は変更になった)、おもちゃの生涯を描くというコンセプトに水を差さない。トイ・ストーリー2は、今一つの感があったが、3は本当に満足のいく作品だった。
3ではバービーも大活躍し、女の心意気を見せてくれる。バズのスペイン語版も愉しい。そしてトトロのぬいぐるみがわずかにでてきて、もちろん動く。
スペシャル・サンクスが宮崎駿にも捧げられているが、なんと、別格のスティーブ・ジョブズの次の、ほとんど筆頭と言っても良い位置だった。