東京都青少年健全育成条例改正問題

 ここでも歴史意識はまったく稀薄である。同じ言葉、見たような景色が繰り返される。
 この条例案がネット上で問題として取り上げられ始めたときから、都知事の「太陽の季節」はどうなんだ? という声が上がった。まさにこの作品を発端とする「太陽族映画」のせいで映倫が発足したわけで(http://www.eirin.jp/outline/index.html)、あるいはそういう機関を発足させて何か利権を得ようという目論見でもあるのでは、という疑いまで持ってしまう。歴史の皮肉、というような話ではない。「動物農場」のような話に近い。
 石原慎太郎「処刑の部屋」(千草忠夫ではない)を漫画化するというのはどうか、という話も出ている(酒に睡眠薬を混ぜて女子大生をレイプ……どこかで聞いたような話だ)。
 マンガの規制に関してもすさまじいものがあったことは有名だ。残酷、グロなどで指弾された赤本の描き手であった水木しげるは、今やその一般人である妻がテレビのヒロインとなり、「マンガで大金を稼ぐけしからぬ手塚治虫とかいう珍妙な名前の男」は今や最も有名な日本人の一人だ。
 規制に反対する人も賛成する人もどうか、次のような本を読んでもらいたい。

有害図書と青少年問題

有害図書と青少年問題

 子ども向けの怪奇幻想なども目の仇にされていたことがよくわかる。

 著者のHPにも簡便な資料がある。
http://www002.upp.so-net.ne.jp/kenha/history/nenpyou-01.html

 もっと広い視野を持とう。自戒を込めてそう言いたい。