カナダ・アニメーション映画名作選

NFCにて、先日までやっていたカナダ・アニメ。一応全プログラムを見たが、アニメとは言い難いものもあり、カナダのフィルム・アーカイブの意識がうかがえて興味深かった。
まず思うのは、優れた個人的な作家たちを排出するカナダ・アニメが、長篇を一本作ると、どうしてこんなくだらないものになってしまうのか、ということである。「ヘヴィメタル」というのはカルト的な人気があるらしいが、本当なのか? 一応私もDVDを持ってはいるが、特に家で観たいとは思ったことがない。
1981年の日本の劇場公開アニメーション……「シリウスの伝説」以外、ぱっとは浮かばないが、79年には既に「カリオストロの城」「龍の子太郎」という二つの傑作が世に出ている。またもう少し後になるが、83年には似たようなテーマの(?)「幻魔大戦」が作られている。それらと比べると、あまりにも稚拙である。オムニバスで作るなら作るで、もう少し全体のトーンを統一させることはできないのか。カナダにはもうちょっとまともな脚本家はいないのか、と思わざるを得ない。
ちょっと話は逸れるが、実のところ、アニメでは画面技術(演出・動画)もさることながら、脚本の力が非常に大きいと思うのだ。作品のコンセプトや世界観を含めた上での、作品全体の文芸面での基本デザインである。去年から今年にかけて必要に駆られてきわめて多数のアニメを観たのだが、脚本の出来不出来はかなり露骨に作品の出来を左右すると思った。ただし、出来が悪くとも受け入れられている作品はたくさんある。ヒットするしないはまた別のことだ。
ヘヴィメタルの場合、導入部とラストの照応がそもそもナンセンスで話にならない。ストーリーの流れにしても、要するに巨乳の女の裸を見せたいだけなのか? というような気分にもなってくる。
同じカナダだって今回も上映されたフレデリック・バック「クラック!」のような小傑作が1981年に作られている。一体この落差は何なのだ。
あとは短篇ばかりで、中にはしょうもないものもあるが、とにかく実験的な作品が許される中で作られたものだけあって、すごいものはすごい。特にマクラーレン。ただし戦中のあまり面白くない広報物を除けばDVDで観られる。ポール・ドリエッセンも面白かったが、これもDVDがある。ただし全部は入っていなくて、その入っていない「古ぼけた箱」が非常に良かった。ドリエッセンはなぜもっときちんとした作品集が出ないか? 
とにかくこれまでに観た作品が多いので、初見で面白かったものというと、イヴリン・ランバート「カエルのデート」、ロン・チュニス「風」、フランシーヌ・デビアン「母さん、あなたに言うわよ!」あたりだろうか。とてつもなくマイナーな感じ……。
観客数はどれくらいだろう。150人くらいかなあ。平日の昼間だと自分以上の年齢の年寄りが多いので、若い人を見ると貴重だ……と思う。しかしこの頃は、アニメは映画よりもマイナーでも仕方ないよなあと思うようになった。
自分でもアニメにこんなにこだわるのはヘンだと思う。