仕事の本

 内田樹の本を読んでいたら、たいへんにおもしろいことが書かれていた。
 ネット上の匿名の貶下の言葉はしばしば呪詛であって、それによって実際に自殺に追い込まれる者がいることを考えれば、効力も確かである。平安時代よりも呪詛の実効力は確かだ。呪詛に対抗するには、匿名性を暴くこと(術を施した人間がわかると、そこへ呪いが跳ね返っていく=呪詛返しが効くから)、祝福によって中和することだ。――
 匿名性を暴くのは一般人には無理なので、祝福するというのが確かな手段だと思う。
 貶下の言葉の毒気を抜くためには、対抗的祝福だというのは、貶下の言葉を書いている(匿名ではないが)ので、よくわかる。それを上回る祝福を与えられれば、それは解消できる。敵対的言辞では不可能なのは、何かが起きたとしても不毛な論争(というか怒鳴りあい)にしかならないからである。
 祝福の言葉の効力が、それを発する人間にも返っていくというのは、これも別に匿名ではないが、内田の言う利得性を抜きにした仕事を長年やってきているので、よくわかる。実感的に感じられる。
 内田のこの考えが広まると良いと思う。

大人のいない国―成熟社会の未熟なあなた (ピンポイント選書)

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