モンスター・ペアレント

 学校に理不尽なクレームをつけてくる親のことをこう言うそうだ。
 同級生に学校教師はたくさんいるが、今は疎遠になっている人が多いので、話を聞いたことがない。四半世紀の教師勤めで、最も変化を感じている人が多いと思う。
 友だちの話を聞けば教師の言い分はよくわかるにちがいない。しかし、教師に対する不信というのは、一朝一夕に培われたものではなく、ずっと昔から、親となった私たちの教師の頃から育てられてきたものなのだ。
 要求の多い親は学校の何たるかを理解していない明らかな愚か者だが、学校に対してうんざりしている親が多いのは当然なのだ。学校は勉強を教える場としては、非合理的、そして人間関係を教える場としては、理不尽であることによってそれを教える場所だからだ。
 学校に喜んで行きたい人はいるのだろうか。授業が楽しい? 友だちと遊ぶのが楽しい? まさか。家にいるよりは退屈でないから、行くのである。もしも……許されるなら、学校なんか行くもんか! 
 双眼鏡で授業を監視しているというバカ親は、教師に何を期待しているのだろう。こういう人たちは、すごく良い教師に教わった記憶でもあるのだろうか。時間をもっと有効なことに使ってもらいたい。そもそもこんな親の子どもは、窒息しそうな気分にならないのだろうか……。
 こういう親は、自分のバカ息子を学校が何とかしてくれるとでも思っているのだろうか。考えが甘い。子どもは本質的に親のしつけ以上に良くなることはないのだ。というか、入学時までにはほとんど決まってしまっていると私は思う。教育に頼りたいなら、良い保育園、幼稚園に入れることだ。読み書き算数英語などの勉強を教えるところではなく、きちんとした生活習慣と好奇心やわくわくする心を伸ばしてくれるところ。
 学校は、自由を押しつぶす場所だ。型にはめることで何とか規律を保たせようとする場所だ。そんな場所に大きな期待を抱くのは間違いだ。子どもはそれに耐えて、社会化される。親は、通常は、耐える子供を支えるべきなのであって、学校へのクレームは、本当に大事な時のために取っておくべきなのである。