オレンジ党最後の歌

オレンジ党 最後の歌 (fukkan.com)

オレンジ党 最後の歌 (fukkan.com)

なぜ、今さら続篇なのか。3年前におおむね脱稿していたというので、3.11が契機というわけでもないようだ。オレンジ党のシリーズは、日本の児童文学のファンタジーのテーマの一つである環境問題(自然と人間との関わり)を扱っているのだから、原発カタストロフを契機とするのは、自然なことなのだが、そうではないようだ。
テーマ的には「物語の力」ということが強調されていて、むしろ言論に於ける危機が筆を執らせたかのようにも見える。安倍晋太郎のもとでの学校改革問題が、契機であったようにも見える。
しかし、そんなことではなく、年月を経て、また書いてみたくなったという単純なことなのかもしれない。ル・グインのように、前作を破壊するような無残なことはしていないので、愛惜の情があったという感じだろうか。
物語は、名和ゆきえを再び迎えたオレンジ党のメンバーが、鳥の王を助けるために冒険を繰り広げるというもの。教育委員会が世界を暗黒に塗り替えようとしていて、何か「宝」を持っているらしくて邪魔くさいオレンジ党を消しにかかる。ラストでは3.11を踏まえた話になっている。
オレンジ党は好きな作品であるが、このような形の続篇を読みたいとは思わなかった。「海へ」でそれなりに終わっていたわけだし、こんなふうに終える必要があったのか?と思われてならない。社会的テーマと絡めて書くのであれば、もっと外伝的なもの、鈴木文彦の物語や沼の王の娘の物語にすればよかったのに、と思ってしまう。
シリーズのファンは買わずにはいられまい。しかし、いろいろな意味で悲しい思いを味わうことになるだろう。