死者の短剣

死者の短剣 旅路 上 (創元推理文庫)

死者の短剣 旅路 上 (創元推理文庫)

死者の短剣 旅路 下 (創元推理文庫)

死者の短剣 旅路 下 (創元推理文庫)

シリーズ第三巻
結婚を認めてくれなかった湖の民の許を離れたダグとフォーンは、ブルーフィールドで休養の日々を過ごして後、再び旅に出る。
ダグは、地の民のための医者になろうという考えを固めていき、フォーンは薔薇色の未来を夢見つつ、ダグと行を共にする。
今回の行き先は海。川下りの船に乗って、ひたすら川を下る間にも、種々の厄介ごとが……。

訳者が「大人のファンタジー」と定義づける、性描写の細部はすっかり影を潜めた。実のところ、ビジョルドは、自分の考え出した「基礎を扱う」という概念(魔法)を練り上げていくことに夢中なのであって、豊かな性のありようというのも、その一つの表れに過ぎなかったのであろう。あるいは、一巻が、そんなこんなでいまいちで評価がきつく、考え直したのかもしれない。これまでの中で、いちばん今回が良かった。
《ヴォルコシガン・シリーズ》でも、あるいは単発のファンタジーでも、巧みにキャラクターを描き分け、人間関係の妙で見せるビジョルドの技術は、この作品でも充分に活かされており、今回は、湖の民の若者二人が良い味を出している。このままスペ・オペになってもおかしくないな。
表紙画はしばしば内容を無視するが——白猫って言ってるのに黒猫にしてみたり——これもそうで、ダグは左手に弓、右手に矢のはずなんだけど(これでは連射が出来ない)。フォーンは黒髪であるはずだし。川もこんなか? 地形と合わないのでは。なんでこんなふうなのかな?