好き好き大好きと言っておく
津原泰水の『瑠璃玉の耳輪』が刊行された。ウェブとは面目を一新したらしい。未読。
- 作者: 津原泰水,尾崎翠
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2010/09/10
- メディア: 単行本
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好きならうまい批評が書けるのか?というと、それは違うと思う。良い、というか熱のこもった批評を書くために必要なのは、好き嫌いではなく、どれだけ高く評価しているか、その作品に価値を認めているか、ということだ。また、批評意欲をかきたてる作品というものもあり、読めば誰にでもわかるような作品については、うまく書けるような気がしない。例えば、私は皆川博子の『冬の旅人』について、良い評論が書けるだろうと考えるが、これは、皆川さんから、一部の理解を得られなかったという話を聞いているからで、読み切れない人がいることを知っているので、作品の核心についてわざわざ書く気になるということなのである。批評を書くのは簡単なことではないから、モチベーションが何より重要である。それは……評価されてしかるべき作品が真っ当に評価されない、あるいは哀れな誤読にさらされている、という時に生まれるのであって、素晴らしい作品が、その素晴らしいままに正当に評価されているなら、多大な労苦を担ってまで批評を書く必要なぞ感じないのである。