『空爆の歴史』

 『空爆の歴史』(岩波新書)という本を読み、空爆という無差別攻撃(建前は違う)の思想……などというたいそうな物ではないが……をなんとなく理解した。近代的戦争の前で、人間の命は限りなく軽くなるが、すべてが軽くなるわけではない。戦争を遂行する主体は、命の軽重をつけ、個人の生というものを差別化し、軽いものを決める。低い階層と思うものを軽くする。低い階層とは、非文明国・植民地・敵の女子供などなどである。
 そして、報復がないということになると、空爆にも禁止兵器にも何にもためらいがなくなるのだ。
 恐るべし、差別。
 おそらく差別意識のない人間はいない。それは何か自我に関わる根本的なものの一つなのだ。差別意識の超克は聖人以外には不可能である。だからこそ、凡人はせめて差別意識への内省ぐらいはしておかないとまずいだろう。

空爆の歴史―終わらない大量虐殺 (岩波新書)

空爆の歴史―終わらない大量虐殺 (岩波新書)