ワースト本

 私の守備範囲の怪奇幻想文学に限っての話だが、単行本になっている長篇(中篇)の中で、最もひどいのは何か、というのが話題になることがある。
 よくもこんなのが本になったな、というような本。10年ぐらい前までは、自費出版がこんなにも流通していなかったので、ああこれはヒドイ……というものがそんなにはなかったし、だいたいそういうのは絶版になってしまったので、人々の好奇心をかき立てたのだが、今は、そういうのが平気で流通しているから、あまり興味を引く話題ではなくなった。リアル鬼ごっことかさ。
 2chに投げた本のスレッドというのがある。俗流オカルトライター飛鳥昭雄のLost Soldiers を検索している時に引っかかった。作者名も忘れたが……と内容紹介もなく、とにかくひどくて投げた、とだけあったので、参考にならない。図書館にもない。仕方なくAmazonの古書で買った。341円なり。宮内庁が管理する巨大な墳墓に旧日本軍兵士が生き続けてきた、という話で、ひどいというレヴェルを超えている。便所の落とし紙にもならない。これは買うのも悪い。たぶん最初にssの生き残りがuボートを奪って逃走、というプロローグがあるので、そこだけ読んで騙されたんだろう。私も紹介記事で、そのssの亡霊でも出るのかと思ったんだよね。だが、残酷なプロローグとその後の展開がほとんど何の関係もないのだから、投げても不思議はない。というか、やっぱりこれを正価で買ったら怒り狂うだろう。飛鳥マニアが買うのだろうが、よくもこんな本を出した。オカルト本は売れるんだろうな。小説はオマケ。
 ということで、徳間文庫から五次元文庫つうものが創刊される。飛鳥の本ももちろん含まれる。おお、こんなものが商売として考えられるようになるとは、世も末だ。学研の文庫だってこんな派手なことはしていないぞ。
 スピリチュアルですって? まあ、なんておバカなんでしょう。