ミリキタニの猫

 ツールレークに収容され、市民権を剥奪された日系人が、80歳を超えてホームレスのストリート・アーティストとして生きている。収容所の絵や猫の絵などを描き、アメリカ政府はクズだとののしる。9・11テロが起き、大気中に崩壊の塵が舞う。その中で暮らしていたミリキタニを、リンダ(映画の監督)は引き取って共に暮らし、社会福祉を受けさせることに成功する。
 俺は偉大な画家、何も問題はない、と言う、ものすごい唯我独尊風。次第に社会福祉を受け入れ、部屋を与えてもらい、ツールレーク再訪を果たすと、過去をようやく振り切ることができたことを告げる。収容所では、自分と同じように猫好きで、自分の後をついて回っていた少年が死んでおり、彼に花を手向けたかったとミリキタニは言う。
 リンダがミリキタニを撮り続け、受け入れ続けたことで、60年にわたって残っていた怨念が消えたのかと思うと、すごいものを感じる。彼もまた怨念を捨てたかったのだろう。