なんじゃこりゃ

 ただいま新聞の仕事中。で、斜め読みして怒髪天を衝いた本。

入江隆則『敗者の戦後』(ちくま文庫
 アンチ・コミュニスト、大衆嫌悪、民主主義憎悪の論客なのだろうか。いろいろ問題の個所は多い。ダダイズムをバカにした文章もスゴイが、日本の降伏について述べたところは、すさまじいなんてものではない。

 国体護持(天皇系の存続)を唯一絶対の条件として日本は降伏した。戦争放棄条項は、国体護持のために差し出した贈与物である。国体護持がなされなければ、「原爆がいくら落ちて、日本全土が文字通りの焦土になっても戦い続ける決意だったことになり、これはまことに見事なコンセンサスで世界史上まれに見る降伏条件だった。」国体護持が拒否されれば、日本人は民族滅亡の道を選び、「絶望的な徹底抗戦」「パルチザンテロリズムによる執拗な報復が続いたに違いない」。天皇の戦争責任をかばった東条は偉い。「功利的な近代史のただ中に、民族の滅亡とも引き換えて守らねばならぬ中核価値をこれほど強固に維持しようとした民族がいたことを驚くべきであろう」。「200万英霊は犬死にではない。200万英霊の力と、未来の安全保障を棄てるという日本人の決意が、中核価値としての天皇を守ったのである」。

 バ〜カ。信じられないぐらい愚かだ。国体護持を願ったのは、一部の軍人と政治家だけだろう。誰が民族滅亡の道を選ぶのだ? 英霊200万とかいっちゃって、靖国さまさまか? 市民は勘定にも入っていないわけだよ。民間80万、兵士230万、併せて日本の戦死者は310万、これでも充分多いと思うが、なおも7000万人弱が天皇のために死んだに違いないなどと言うことは狂気の沙汰だ。だいたい、そんな戦争をアメリカはしないだろう。パルチザンだあ? 竹槍でか? 食糧もなく? 原爆症に悩まされながら? あんたの大嫌いな共産ロシアの支援を当てにでもするのか?
 こいつの頭からは、都合の悪い戦時中の出来事なんぞ、すべて消えているんだろう。沖縄人など、元来日本民族でもない人々を最も苛烈な戦争に巻き込んで、多数殺したということをどう思っているのか。あるいは朝鮮人や台湾人などで動員された人たちは、移住した、させられていた人たちは? こんな愚か者が偉そうに本など書くな。天皇の戦争責任を認めているとおぼしい発言と、天皇崇拝が同居する神経も信じられぬ。
 完全に想像力が欠如していて、妄想だけがある。妄想全開ってやつ?

 ネットでちょい見たら、作る会系らしいな。こんな本をちくま文庫で出すなよ。