探す

 電話が通じて、久しぶりで渡電くんと話をした。最近の映画にすっかり見切りをつけた彼は、フィルムセンターに通っているとのこと。それでも一般人よりは、最近の映画にもよほど詳しい。
 一度、偶然に映画館で会ったことがあって、それ以来、特殊なものの上映会に行くと、彼の姿を探すようになった。生きている時間帯が違うので、そんなことは二度と起きないのかもしれないけれど、何とはない習慣である。結局のところ、フィルムセンターでさえ、会ったことはない。
 近所のシネコンでも、知人に会うのではないか、と思って見回してみるが、どうにも会わない。こちらはさいたま新都心の至便の場所で、水曜日のレディース・デイに見に来ている人もいるはずなので、会う確率はもっとずっと高いのに、会わないものである。
 やはり映画館で知人と会うためには、もっと行く頻度が高くないとダメなのだ。
 まあ、単館で二週間の上映でも、70回くらいは上映するわけで、何回か見るようでないと、会えないものかもしれない。いろいろな映画に行ってもなかなか難しかろう。それに、そんなに簡単に知人と会ってしまったら、会いたくない人に会うという確率も高まるわけだし。
 それでもやっぱり、変な映画を見に行った時には、私は彼の姿を探すだろう。