阿部和重

ピストルズ』読了。
 あまりにもつまらなかったので驚いた。これで谷崎潤一郎賞なのか。選考委員は池澤夏樹川上弘美桐野夏生筒井康隆堀江敏幸。筒井は『夢の木坂分岐点』、池澤は『マシアス・ギリ』で、川上は『センセイの鞄』で、桐野は『東京島』で、堀江は『雪沼とその周辺』で同賞を受賞。こうしてみてくると、その地盤沈下というか、劣化というか、明らかですごいが、まあそれはともかく、各選考委員は『ピストルズ』と自身のそれぞれの作品が同等かそれに近い価値があると認めた、と考えて良いのだろうか? 〈文章そのもので読者を幻覚の世界、一種の催眠状態に引きずり込もうとした、壮大な文学的実験である〉って誰が言ったのか? まず、文体のことを言っているなら、そういう意味での実験作ではない。また、内容的にもそうだ。そもそも催眠状態と幻覚の世界は違うでしょー。そして、幻覚の世界に引きずり込むような作品は、こんな作品じゃなくて、稲生平太郎の『アムネジア』とか津原泰水の作品のようなのを言う。従って、選考委員全員の見識を疑う。